ピアノという楽器では、指の動きがそのまま音に変換されます。

ワープロソフトの素晴らしいところは、キーボードを押すときの力の強弱や押している長さなどが一定でなくても、一様に整った文字を整列した状態で表示してくれるところです。

一方、ピアノの場合、鍵盤の下げ方一つで、音の大きさが変わり、鍵盤を下げている時間によって、音の長さが変わります。

ワープロソフトは、該当するキーさえ間違えずに押せば、あとはソフトの側で全ての処理を行ってくれますが、ピアノの場合、単に該当するキーさえ間違えずに押せば良いというものではなく、それをどのように押すのかということに対する注意も必要になります。

このような事情から、ピアノを演奏するにあたっては、日常生活における指の動かし方とは異なる、ピアノ向けの指の動かし方というものを習得することが必要になるわけで、この特殊な指の動かし方を習得するために、指の練習というものが登場してくるのです。

英会話ができるようになるためには、自分の口で英語をしゃべらなければいけません。

泳げるようになるためには、自分の身体で泳がなければなりません。

同じような意味で、自分の手でピアノを弾いてみたいのであれば、指の練習が必要であるということは、すぐにご理解いただけると思います。

にもかかわらず、ことピアノにおいて指の練習の是非が問われるのはなぜかといえば、指の練習という言葉の裏に、ハノンやツェルニーといった膨大な練習曲集がちらつくからです。

多くのピアノ学習者を苦しめるハノンやツェルニーといった膨大な練習曲集。

指の練習が必要かというテーマは、暗に、ハノンやツェルニーといった膨大な練習曲集を延々と弾き続ける必要があるのかどうかということを言っているのです。

さて、ハノンやツェルニーといった膨大な練習曲集を延々と弾き続けると、誰もがみな、超絶技巧の持ち主になれるという高い実績があったとします。

そして、それを実践した人全てが、同じように効果効能を認め、再現性が高いものであるならば、それを実践することに対して、誰も疑問を持たないはずです。

ところが、現実には、これらの練習曲集の存在に対して、多くのピアノ学習者やピアノ教師が疑問を持ち、常にその是非が問われ続けているのです。

中には、ハノンやツェルニーを使用することは危険だという意見もあります。

危険というのは極端ですが、私の考えは、延々と弾き続けるだけであれば、その時間を他のことに使ったほうが、よほど有意義であるというものです。

例えば、ツェルニー30番の1番を例に考えてみましょう。

楽譜を開きますと、メトロノームの指定があり、二分音符100と記載があります。

この速度で一音たりともミスすることなく、音の強弱、レガートといった楽譜に記載のある指示を全てこなすことができるところまで練習するのであれば何かしら得るものはあるのかもしれませんが、一般的なレッスンでは、四分音符100でどうにかこうにか止まらずに弾けるようになったところで、マルとなります。

この場合、先生からマルをもらったとか、最後まで弾きとおすことができたといった達成感は得ることができるのかもしれませんが、今後につながる演奏技術の習得という点では、何も得ることができていません。

これを何回繰り返したところで、本一冊マルで埋まったとしても、今後につながる演奏技術が習得できていないという点は変わりません。

やるのであれば、指定の速度で一音たりともミスすることなく、音の強弱、レガートといった楽譜に記載のある指示を全てこなすことができるところまで練習しなければ、今後につながる演奏技術の習得には至らないのです。

そうであるから、ハノンやツェルニーを練習する必要があるのかとなり、そして、指の練習をする必要があるのか、となってしまうのです。

残念なことに、ピアノの世界では、漠然と弾くだけで、確実に今後につながる演奏技術が習得できるといった、魔法のような練習曲集や練習方法はありません。

目的を明確にし、その目的に合った練習曲や練習方法を見つけ、それを徹底的に練習して自分のものにしていくしかないのです。

ピアノを演奏する以上、指の練習はどこまで行ってもついて回りますが、それは必要性や関連性の上に成り立っている指の練習であることが大前提です。

必要性や関連性を考慮した結果辿りついたハノンやツェルニーと、何だかよくわからないがやれと言われたからやっているという状態で練習するハノンやツェルニーとでは、同じものを練習していても結果が全く異なるのです。

もしも、必要性も関連性も感じられないような指の練習を行っているのであれば、それは今すぐにやめて、下手でも何でも自分の好きな曲を弾くことに時間を使ってください。

それが、正しい趣味の時間の使い方ではないでしょうか。

---

オンラインピアノレッスンのご案内

当ブログは以下のブログランキングに参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ
にほんブログ村